情報格差

情報格差(じょうほうかくさ、英 Digital Divide)は、コンピュータで扱うデジタル化された情報を入手したり発信したりする手段を持つ者と持たない者との間の格差(情報格差)のことである。通常は、通信手段に関する格差も含まれる(通信格差)。英語をそのまま音訳した、デジタル・ディバイド(デジタル・デバイド)とも表記・呼称される。

広義には、放送手段に関する格差も含まれる(放送格差)が、デジタル・ディバイドと言う場合には、通常は放送格差を意味しない。広義の情報格差については色々な表現があるが、情報資源格差と総括される事もある。

概説
(日本国内では)1990年代以降、社会の仕組みが、インターネットなどのコンピュータネットワーク情報技術)を当然のものとするようになるにつれ、パソコンなどの情報機器の操作に習熟していないことや、情報機器そのものを持っていないことは、社会的に大きな不利として働くようになった。この不利により、情報機器の購入・維持や教育を受けるための費用が出せない者、または、情報機器に対する拒絶反応(コンピュータアレルギー)のために情報機器を利用できない者は、経済的に不利になるという悪循環が生じ、この不公平を情報格差と呼ぶ。

これらは、社会の工業化とともに、読み書き(リテラシー)が当然のこととして要求されるようになったことと対比され、情報リテラシーと呼ばれる。情報格差が貧富の差を拡大する要因とならぬよう、各国政府は対策に追われている。

日本ではe-Japan計画が策定され、学校教育における情報教育カリキュラムの充実、学校への情報機器の整備、講習会の受講料金の補助や、自治体と共同で全県的なブロードバンド通信基盤の整備、通信事業者への補助などの制度が実施されている。

また、通信格差の側面としては、(日本では)2000年頃からの、インターネットへの定額高速接続である、いわゆるブロードバンドが普及するに連れ、整備の進み具合によりブロードバンドを利用できる地区と、ブロードバンドを利用できない地区との情報アクセスへの格差が生じている。これもe-Japan計画において改善の最重要課題にあげられている。

[編集]
情報格差の各側面
情報格差(情報手段の格差)
コンピュータハードウェアおよびソフトウェアを、容易に入手できるかどうか。経済、流通などの側面。
コンピュータやそのネットワークインターネット)を、人が容易に利用し、使いこなす事ができるかどうか。人的側面。情報リテラシーなど。
通信格差(通信手段の格差)
インターネットを始めとする情報ネットワークに、容易に効率的に接続できるかどうか。接続費用の経済面、サービスエリア、速度など。
携帯電話・PHS、無線LAN等の移動体通信を容易に利用できるか。接続費用の経済面、サービスエリア、速度など。
広義の情報格差(情報資源格差)
放送格差
放送サービス(地上波、衛星波など)を容易に受ける事ができるかどうか。サービスエリア、国、地方それぞれの格差。
マスメディアの格差
新聞・書籍・雑誌、レコード・コンパクトディスク、映画(映画館)などを、容易に入手・利用できるかどうか。また、図書館サービスの利用容易性。
[編集]
日本における情報格差 (通信格差)
いわゆる日本国内におけるブロードバンド利用可否の格差。日本では2000年頃から、いわゆるブロードバンドが普及するに連れ、都市部のようにブロードバンドを利用できる地区と、過疎地域のようにブロードバンドを利用できない地区との情報アクセスへの格差が生じるようになっており、現在ではほとんどの市、および町の半数程度で提供されるようになっているが、ほとんどの村や離島(特に沖縄県)では未だに提供されず、また提供の義務づけがなされていないという問題がある。(64kbps以下の低速・定額制のインターネット接続サービスだけなら、かなり多くの村にまで普及している)

このことは、一部の電子掲示板などのコミュニティでしばしば取り上げられるようになった。「スラッシュドット」では、「ブロードバンド難民」と呼ばれた。

これには二つの意味があり、情報格差 (通信格差)として問題になるのは主に後者である。

ADSL等の加入・解約手続きを行ったにもかかわらず、それに関する手続きや作業を長期間履行されず放置されている者。さらに長期間待たされた上に断られたり、特に解約時においては「回線握り」と呼ばれ、ADSL業者を変更する際に問題とされる。Yahoo! BBにおいて開業当初に問題とされたが、現在では改善されている。詳細はYahoo! BBを参照のこと。
住んでいる所で、ブロードバンドあるいは定額制インターネット接続サービスを全く受けられない状態。ここでは、こちらを主に取り上げる。
[編集]
分類
過疎型 人口が少ないために、民間ベースでは採算が合わないという言い訳があるうえ、法的にも「全国=国内全ての市・町・村」への提供が義務づけられていないためサービスを受けられない。近年のアクセスポイントのワンナンバー化により、頼みの綱である準定額サービステレホーダイが利用できないプロバイダが増えつつあることが懸念されている。
都市型 既に地域としては進出済みであるが、後述する事情によりサービスを受けられないケース。大都市周辺の郊外の住宅地に多い。ただし、定額制ナローバンド接続は使用できるケースも多い。
[編集]
原因
最大の原因はやはり過疎=採算が取れない、という言い訳にあるが、他にも以下のようなものがあり、複数の原因が存在する。

過疎 - 人口が少なすぎ、民間ベースでは採算を合わせることができないという言い逃れがある。これらの地域では自治体主導でCATVなどの整備を進めているところが多々あるが、山間部など新規配線コストが高額になる様な所では苦戦を強いられている(だからといって提供を免れていい、という理由にならない)。
光収容 - RT(リレーターミナル = 銅線と光ファイバの変換装置)等により、経路途中まで光ファイバ化されていたり、最近のマンションなどの集合住宅において、電話回線が光ファイバで引き込まれているため、ADSLのように、電話局から末端の加入者宅まで一貫してメタル線を必要とするインフラを利用できない(直収電話等も同様)。これは、当初NTT東西がFTTH整備までISDNを使う予定で投資を推し進めた名残である。
回線品質 - 電話局の統廃合や人口密度の低さなどで、電話局からの線路長が長すぎる、紙絶縁など品質の低いケーブルや手抜き工事、スタブ、幹線道路や鉄道などから発生するノイズ、海岸沿いに於ける塩害などによるケーブル及び器具の腐食などによる回線品質の悪化など、信号の減衰やノイズが多すぎてADSLを利用できないケース。
電話設備の問題 - 会社や学校などの独身寮を中心とした集合住宅においては、電話回線自体がレンタル回線であったり、工場や学校の敷地内にある場合には、PBX等独自の交換設備を介している場合があり、この場合はADSL等のブロードバンドサービスはもちろん、フレッツISDNを含むISDN回線、テレホーダイ等の割引サービスなど、一般的な音声通話以外のサービスを一切受けられない。
集合住宅問題
集合住宅で、FTTHやCATV等、配線方法によっては穴あけなど壁面工事が必要なインフラは、賃貸住宅であれば大家、分譲マンションであれば管理組合の許可を得る必要があるが、インターネットに対して関心が低いなど何らかの理由により敬遠するような大家、管理組合や住人が居る場合には、しばしば許可が得られないケースがある。また、住宅の戸数が少ないために事業者の営業上の理由で不可な場合や、電信柱より高い部屋には光ファイバーを直接引き込めないなど施工方法上の理由で不可な場合などもある。
ブロードバンドが一般化する前の建築物においては、光ファイバなど新しいインフラに対する配慮が行われていないことが多く、配線や配管のスペースに余裕がなかったり、特に急カーブさせることが難しい光ファイバを通すことは困難である。
CATV対応マンションであっても、配線されている同軸ケーブルに関して、流合雑音の問題や、あるいは有線放送などを重畳などしているため、CATVのインターネットサービス(CATVのデジタル放送サービスも含む)を利用できないことがある。
共同アンテナ問題 - 過疎地に於いて、共聴組合にて管理しているTVアンテナの中には、CATVに複数の組合員が移行した場合、TVアンテナの保守管理がコスト高になり、運営が不可能となる。その為、区域全体でCATVの導入に消極的になり、併せてインターネットの整備が遅れる結果を招いている。
電線類地中化問題 - 電線類地中化で道路に電柱が無くなると、地下管路を経由して、ケーブルを建物に引き込むことになるが、その割高な工事費や、通信会社が道路管理者に支払う必要がある管路使用料がネックとなり、光ファイバー同軸ケーブル等の敷設を拒む通信会社が存在している。*日経パソコン *週刊朝日連載「ITにタックル」
[編集]
格差により生じる問題点
通信速度の差は、情報収集等の能力の差に繋がる。近年では学校教育や就職活動、情報系を中心として、各種産業においてブロードバンドへの依存度が高くなっており、学校のカリキュラム遂行に支障が出たり、就業機会に影響があるなど、デジタルデバイドの一形態ともいえる問題がある。これにより、未提供の地域(特に村・離島)では若年層の人口流出なども発生し始め、過疎化を促進している面もある。
ワームやコンピュータウイルスの蔓延に伴うOS等のセキュリティーパッチやアンチウイルスソフトウェアのパターンファイル入手、あるいは各種ソフトウェアのバグフィックスの修正ファイルの入手が、Windowsを中心としてブロードバンド回線によるダウンロード依存型になっている。「ブロードバンド難民」のユーザにとっては、それらへの対策が困難になりつつある。
ウェブページの閲覧、ファイル転送やメールの送受信に関して、当初よりブロードバンド回線による大容量の通信を想定している場合には、結果としてナローバンドユーザのサービス利用を疎外してしまう面もある。(ナローバンドユーザへの配慮も必要)
ADSLやFTTH、CATVといったブロードバンド回線の利用を前提としているIP電話が利用できない。
動画や音楽の配信、オンラインゲームといったサービスはADSL以上の速度を有する回線を前提にしており、ナローバンドでの利用を全く想定していないため、有料(ないし無料)のサービスがほとんど受けられない。
個人情報保護法の施行に伴い、学級の緊急連絡網をインターネットによる直接連絡に切り替える動きがあるが、その際に情報格差 (通信格差)の発生している家庭への対応が問題となっている。
[編集]
解決策
[編集]
技術的解決策
技術の進歩・低価格化により、数年前までは不可能だったブロードバンドの導入も可能・容易になっている。

プラスチック製光ファイバーの導入・普及
グラスファイバー製よりも曲げに強く、屋内配線として、通常の配管にも導入しやすくなった。
ラスト10メートルの進歩・普及 (FTTB/FTTC等)
集合住宅でのLAN配線導入の増加、VDSL(MDFから各戸に既存電話配線により高速信号を通す《10~100Mbps》)やFWA(集合住宅近傍の電柱に無線の基地局を設置し、個宅のベランダにアンテナを設置する)などを利用するFTTB/FTTC等が普及した。
既存インフラの活用
前記に加え、 有線放送電話やCATV網の活用によるインターネット接続
改良型ADSL
独自技術によって、メタル線のまま長距離対応を実現したReach DSLや、途中経路まで光ファイバを使用でき、韓国で導入されたHFA (Hybrid Fiber ADSL) 等がある。
無線によるラストワンマイル整備
無線LAN、スピードネット(新規受付終了)、定額制PHS、FWA等
[編集]
ナローバンド定額制や、無線系アクセスによる代替
それでもなお、諸事情のためにブロードバンド回線が利用できない場合では、ISDNベースのフレッツISDNや、本来モバイル向け無線アクセスであるPHSのAIR-EDGEの定額制接続や、@FreeDなどの定額制ナローバンド接続をメイン回線として使用し、電話代の問題だけでも解決を図るケースがある。

第三世代携帯電話においては384kbpsや、2Mbps以上の通信スループットを謳うサービスもあるが、殆ど全てがパケット量従量制の課金体系であり、通信端末とPC等を接続して利用すると、何万円~何百万円以上の(超)高額課金を請求される虞がある。パケ死の項目も参照。

PHSのAIR-EDGEにおいては最高408kbpsを謳うW-OAM通信がサービス開始されたが、第三世代携帯電話のMbpsクラスの高速サービスと同様に、大都市部・都市部から先にサービス展開がされるため、地方部では高速無線アクセスの恩恵には与りにくいのが現状である。また、通信パケット量が多くまたは通信時間が長くなるほど、課金が上昇する従量制(準定額制を含む)であったり、PHSの定額制・準定額制においても、高速な通信になるほどまたは通信時間が長くなるほど、基本料金が高額であったりと、固定通信系ブロードバンド回線に比較してスループット対コストのパフォーマンスが低い問題もある。ただ、移動体通信事業には巨額の費用が必要であること、また有限資源である無線帯域を共用して伝送路として利用する以上、現状避けがたい問題ではある。

ただし、フレッツ・ISDNやダイヤルアップISDNも、全国的にカバーされているように思われがちだが、フレッツ・ISDNについては一部地方に未対応の局が残っており、また収容局から加入者宅までの線路長が8~10kmを超えるような場合には、ISDN自体のサービス提供が困難であり、(PHSやダイヤルアップ接続等での定額制接続手段が無い限りにおいては)いずれの常時定額接続手段も存在しない地域が残っているため、いずれにしても村や離島で100%提供できていないのが現状である。

[編集]
自治体等の取り組み、今後の技術展開など
自治体やNPOの関心が高い地域では、さまざまな地域独自の試みが行われている。

多摩ニュータウンの八王子市柚木地区のNPOである「FUSION長池」や八丈島の「八丈島にブロードバンドを推進する会」等による署名活動やブロードバンド事業者や行政に対する陳情活動が行われたり、北海道 渡島支庁 山越郡 八雲町の八雲PC同好会のように署名や陳情だけではなく、独自に専用線を確保して、無線LANで分配することで定額接続を実現といったケースがある。特に八雲町のケースは、北海道新聞で報道され、これをきっかけにブロードバンド事業者が八雲町への進出を決めるなどの反響があった。

また、島根県や秋田県、岡山県では、ADSLを中心に進出したブロードバンド事業者に経済的援助を与えたり、地方自治体が整備したインフラを民間にも開放するなどの整備促進策を取ったり、三重県や岐阜県などでは、CATVを主として県がブロードバンド整備を行っている。この為、三重県に於いては、県道や国道から余程離れた一戸建て以外では、殆ど全県でCATVによるブロードバンドが利用できるまで整備されている。

総務省でも、この問題を解決するために、地方自治体が初めから民間への開放を目的としてインフラ整備を行うことの是非が論じられたり、5GHz帯を無線によるインフラ構築用に開放する動きがあるが、現在の行政側の対策は、過疎型対策がメインである。

また、技術的には、研究開発段階ではあるが、人工衛星による超高速インターネット衛星「WINDS」などが計画されており、全国同じ条件でサービスを受けられることが特徴となっている。「成層圏プラットフォーム」(成層圏滞空飛行船)もこれに近い形態といえる。[1]

[編集]
インターネット業界以外での動き
不動産業界 - 物件の付加価値向上の一環として、ブロードバンドに対応を進めるケースも出てきている。これらの地域に於いては、広告中にブロードバンドの可否が記載されていることが多い。
[編集]
放送格差(日本)
放送系の情報格差。普及から今日に至るまで、キー局の独占による地上波テレビ放送の地域格差(都道府県別のチャンネル数格差)が、近年改善の方向があるとはいえ、根強く残っている分野であり、また、ケーブルテレビやデジタル放送の分野においても、同様の地域格差がある。放送格差とも言える。

ただし、全国を遍く網羅する衛星放送・衛星デジタル放送により、情報格差はある一定のレベルについては解消されつつあると言える。ただ、集合住宅問題として、何らかの理由により衛星アンテナが設置できない問題は、都市部も含めて残る(東京23区は除く)。

ケーブルテレビは地方部の多くの自治体により、地上デジタルテレビジョン放送は国により強力に推進されているため、都市部でなくとも地域格差の解消は進むとは考えられるが、それでも国内全ての市・町・村・離島が網羅されないため、特にケーブルテレビについて地域格差は根強く残る。

また、デジタル化ケーブルテレビや、光CATV(放送系光ファイバー、光放送)などのために必要な光ファイバー基盤(FTTH/FTTx)も、前述の推進はあるとしても、やはり都市部に偏在しがちなため、サービス展開上は地域格差が生じる。

[編集]
国際的な情報格差
また、経済力や通信技術の面で、発展途上国は先進国に比べてどうしても不利な立場に立たされやすい。マサチューセッツ工科大学のプロジェクトチームが推進している100ドルパソコンは、このような情報格差の解消を目的としている。 アメリカでは白人と黒人の情報格差の広がりが問題になっていたが、例えば電話がそうであるように、ある程度以上普及すれば格差が減少していくという事を根拠に政府がインフラ整備とIT技術の普及に予算をつぎ込んだ。つまり、普及を進めればいつかは予算がいらなくなると言う論理である。

[編集]
関連項目
格差社会
情報革命
情報化社会
情報技術(IT)
産業革命
コンピュータと社会
基礎的電気通信役務 (ユニバーサルサービス)
ブロードバンドインターネット接続
ラストワンマイル