B-CAS批判

B-CASに対する批判
B-CAS方式に限った話ではないが、DRMは自社の競争力を優位に立たせることを目的とした囲い込みに悪用することも可能であり、公共の電波にて同技術を運用するB-CAS社および同カードに対する批判もある。

独占事業に対する批判
テレビ放送の日本のほぼ全世帯での視聴の可・不可を物理的に制御可能であるようなB-CASおよび同カードが、一民間企業であるB-CAS社によって独占的に管理されていることに対し、独占禁止法や個人情報保護上の問題、さらには報道の自由の一部である放送の自由の反射的対象である「放送の視聴の自由」をも侵害しかねないと批判する向きもある。
しかし、特許権の管理事業は独占禁止法の適用除外となっており、これにより違反にはならないという意見もある。が、仮のその主張を通してしまうと「適当な理由を口実に市場を囲い込んだ上で、本来なら経済的価値のない特許の利用を談合により強制する」といった形の脱法行為がまかり通る事態となるため、許容される法的根拠はないと考えられる。(ただし、このように悪質な囲い込み事例は他に存在せず、この種の脱法行為に対する判例等がないため、司法判断が待たれる状態でもある)
事実上、日本においてデジタル放送受信機を製造・販売するにはB-CASカード発行審査に合格することが必須条件となる。結果的にはB-CAS社が一家電製品の市場を囲い込む事が可能となり(実際に、受信機を製造しているのは限られたメーカーであるため「可能性」ではなく「事例」となっている)、独占禁止法違反の疑いが指摘されている。
しかし、B-CAS社の事業ジャンルは一家電製品製造ではなく限定受信システム事業であるので、この指摘は的を得ていないという意見もある。が、この主張を認めるなら「結果的に特定市場を囲い込んでしまったが、本来は別の事業によるものであるので正当だ」とする悪質な主張を許し、独禁法の趣旨を骨抜きにされかねないため、やはり許容される根拠はないと考えられる。
また、信頼できるメーカー以外チューナーを提供しないとする取り決めが行われているとも言われ、やはり独占禁止法違反の疑いが指摘されている。更には正式な認証プロセスすら用意されていないなど、恣意的な運用を疑われてもやむを得ない面があり、国内外から批判が絶えない状況である[2]。

公益性を根拠とする批判
B-CAS社にNHKが出資していること、B-CASカードが無いとNHKの番組を視聴できないことについても公共放送の中立性との兼ね合いから批判する向きもある。
地上放送・BS放送・CS110度放送といった日本の放送全てといっても過言ではないインフラにおいて有料放送の管理・著作権保護の実現を建前とした全面採用が行われ、かつ広範に個人情報を収集し、全ての国民に対し少なからぬ影響を与える非常に公益性の高い事業を行う企業にも関わらず、株式を非公開とし資産状況・収支状況・役員報酬・諸々のライセンス供与で徴収している費用・さらには活動実態や本店所在地すら公開しておらず、同社の姿勢は公益企業らしからぬ徹底した秘密主義であるとして批判する向きもある。
デジタル化の投資だけで経営を揺るがしかねない地方放送局に対し、放送の本質とは無関係なB-CAS関連への投資まで強要するのはいかがなものかと批判する向きもある[3]
公共財である電波を大規模に占有し営業する放送局の特徴から、いわゆる公道(電波帯域)をB-CAS方式で暗号化し囲い込むのはいかがなものかと批判する向きもある。
諸外国では、公共性の高い地上放送・無料放送をDRM等にて暗号化している事例は皆無であり、B-CASによる全面的な暗号放送は世界的な非常識であるとして批判する向きもある。
B-CASを利用したコピー制御の導入を一番強く要請したのは「ハリウッドなどの映画業界」とされているが、ハリウッドを抱えるアメリカ合衆国において暗号放送は予定すらされておらず、導入理由について疑問の声が上げられているとともに、真の導入理由は別にあるのではないかと勘繰る向きもある。
ただし、アメリカ合衆国においても不正コピーは問題となっており、特に影響が大きいインターネットへの動画流出は阻止するため「ブロードキャストフラグ」と呼ばれるコピー保護技術の導入が進んでいた。ただし、これは日本のコピーワンスとは違って暗号が抱き合わされたものではなく、また、DVD-Rなどの物理媒体への録画やダビングは自由といった極めて軽いコピー制御である。
しかし裁判での争いの結果、このブロードキャストフラグによる軽い制限ですら違法であるとされ、行政当局より排除命令を受ける結果となった。
また、この「ブロードキャストフラグ」はメーカー間の紳士協定によるフラグであり、B-CAS暗号のように公共の電波を私物化してしまうものでもなければ、特定企業に莫大な利益がもたらされるなど利権化する技術ではないことに留意する必要がある。

運用方法などに関する批判
B-CASカードの所有権は株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズにあるとされる事から、デジタル放送対応の受信機器の売買に伴う煩雑さなどについても批判する向きもある。(後述:B-CASカードの所有権問題)
BSデジタル放送・CS110度デジタル放送・地上デジタル放送を視聴するためには否応無くB-CASカードが必要であり、受信機は同カードの発行審査を受け合格するようコンテンツ保護機能を実装しなければならないことから、審査費用・ライセンス費用・更に複雑化する設計による製造コスト増による関連機器の低価格化の阻害や、視聴者に同カードを配布する際のシュリンクラップ契約の妥当性についての批判する向きもある。
また、「テレビを視聴するためにカードを入れる」という、今までの一般家庭にはなかった概念とシステムのために、普及に従ってさまざまな混乱も予想される。一例として、カードの汚損やエラー、カードを破損・紛失した場合等の再発行手続きの煩雑さ、および空き巣などによるカードの盗難などが考えられ、さらに紛失・盗難時の責任は不正利用による損害も含め視聴者(B-CASにユーザ登録された者)に帰属するとされるが、これらの問題は現状ではほとんど議論されていない。
また、上記B-CASカード発行審査は汎用バスに生のデジタルデータを流すことを禁じているが、一般的な視聴スタイルとなりつつあるパソコンでのテレビ視聴や録画、それらの製品開発を著しく阻害しているとの指摘もある。これが原因で完全デジタル化後、現状のアナログ放送のキャプチャ環境と同等な環境を確保すべく、不正な製品(あくまでもARIB技術資料の要件に対して不正ということであり、技術資料を強制することの正当性が否定されるなら、正当な製品である)が多く出回る可能性も高いと考えられる。
オープンアーキテクチャを採用するパソコンは、低層レイヤーを安価な汎用ハードウェアで組み合わせ機能実現をソフトウェアが担うため、ハードウェア同士を連絡する汎用バスには当然生データが流れる。故に汎用バスに生データを流させない審査条件はパソコンの本質を否定することに繋がり、実現には非常な困難を伴うか不可能である。現在製品化されているデジタル放送対応パソコンでは大規模な専用ハードウェアを搭載する形を取っており、パソコンとして受信や録画を実現しているとは到底言い難い。それ故かアプリケーションごとに操作体系が違うなど使い手には理解に苦しむ仕様となり、また構造的に高額商品となるため、消費者に受け入れられているとは考えられない状況にある。
一方で、B-CAS等のDRMが無いワンセグ放送対応としたPC機器は出始めている。であるが、ワンセグまでB-CAS暗号で囲い込まれることへの警戒感のためか過剰なまでに著作権保護を意識した仕様となっており、利便性はアナログ放送の視聴環境とは比較にならないほど低い。また、画質面においても遠く及ばない状態である。(仕様自体がフレーム数や解像度の面で劣っているので当然である)
ただ、ワンセグ放送の圧縮方式は画質をより良くしようとH.264が採用され、モバイル時の受信安定性は勝るものであるが、狭い帯域のためアナログ放送との画質差は埋め難い状態である。それでも「B-CASの存在しないデジタルチューナ」は非常に安価であり、発売と同時に欠品になるなど、それなりに支持される状態である。

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