BSデジタル
使用衛星:東経110度 (BSAT-2a)(BSAT-2c)
2000年12月1日11:00、NHK及び民放キー局の関連会社などがBSAT-1b(後にBSAT-2a)を用いて放送開始した、ISDB-S方式による衛星デジタル放送。テレビジョン放送、超短波放送(いわゆるBSデジタルラジオ、BSデジタル音声放送)およびデータ放送を同一の放送方式で送出するため、デジタル受信機が対応していれば1つの受信機で各種放送が受信可能である。
これまでのアナログによるBS放送はNHK(2チャンネル)とWOWOW、そしてアナログハイビジョンだけだったが、開始時までに、新たに民放系のBS放送を加えてテレビジョン放送10チャンネル、超短波放送(単営)11チャンネル、データ放送(単営)7チャンネルの合計18チャンネルに膨れ上がった。
現状、NHKとWOWOW・スターチャンネルBSなど一部有料チャンネルを除き無料で視聴できる。放送開始当初は「放送開始から1000日(2003年8月頃)で1000万世帯への普及を目指す」と意気込んだが、実際に視聴可能世帯が1000万世帯に達したのは、その目標から2年遅れ(BSデジタル放送放送開始から数えて1735日たって)の2005年8月である。
2005年8月に行われた放送法施行規則と放送普及基本計画の見直し(参照リンク[1])により、BSデジタル放送はハイビジョンテレビ放送に特化した運営がためされることになり、データ・超短波(ラジオ)放送局の設置目標数は大幅に削減されたため、これらの放送局が続々と閉局・終了を発表している。
2006年7月の総務省内の研究会にて、2011年のBSアナログ放送終了にあわせて、デジタル放送のチャンネル数を50チャンネル以上とする報告書をまとめた。新規事業者以外にCS等で放送している事業者の進出や現在の事業者が複数チャンネルの運営などの可能性を示している。
BSデジタル放送における放送局等の詳細はBS委託放送事業者一覧を参照。
特徴
高画質・高音質の迫力あるハイビジョン映像が楽しめる(但し、画像はMPEG2圧縮、音声はMP3並み)
テレビジョン放送では、標準画質に落とすと1チャンネルにつき3チャンネル分の分割放送ができ、同じ時間帯で異なる内容の放送が配信できる(マルチチャンネル放送)
MP3並みに圧縮されたデジタル音声のBSデジタルラジオ放送
番組表をモニター(画面)で手軽に確認できるEPG(電子番組表)
番組に連動した情報やニュース、生活情報などがリアルタイムで引き出せるデータ放送
番組に連動してクイズやショッピングに参加できる双方向放送(※双方向放送に参加する場合、チューナーを電話回線に接続する必要がある。NHKの双方向番組ではインターネット接続のLAN端子搭載の機種でも対応している)
音声の放送形式(フォーマット)にMPEG-2 AACを使用しているため、5.1chサラウンド音声を楽しむことができる。
2004年4月5日から、B-CASカードによる限定受信およびコピー制御(コピーワンス)が開始された。B-CASカードをチューナー等にセットしないと視聴できず、またデジタル録画機器での放送番組のコピーに様々な制限が掛かるようになった。詳細に関してはB-CASの項目を参照。
問題点
鳴り物入りで始まったBSデジタル放送だが、下記の理由から当初の予測よりも視聴者の増加が伸び悩んでいる。
対応チューナーの普及の遅れ
単体チューナーのラインナップ自体が少ないうえに高価(単体のチューナーを現在生産しているのはソニー、松下電器産業〈2機種〉、マスプロ電工、DXアンテナのみ)
ハイビジョン対応テレビが高価な大型モデルに集中し、小型モデルのラインナップが未だ貧弱(2006年に15インチ型の対応モデルが松下電器産業から発売されたが、実売価格は10万円ほどと高価)
これについては、2011年7月24日の地上アナログ放送の停止に伴い、アナログしか対応していない受像機には2011年以降使用できなくなる旨を表示したシールを商品に表示することになったため、技術向上と低価格化によりデジタル受信機の販売が加速されると考えられる(また、テレビ本体が対応チューナーを搭載していなくても、近年低価格化が進んでいるデジタルチューナー搭載型DVDレコーダーなどと接続すれば視聴可能ではある)。
視聴率が計測されないうえ、当然のことながらCMも全国一律でしか流せないことから、スポンサーが付かず質の高い番組が放送されない
その反面、視聴率獲得に走らない番組作りが可能で、地上波放送では実現しにくいジャンルの番組が多く、満足度の点では必ずしも劣るとは限らない。
放送内容面の問題
標準画質の映像をハイビジョンの電波に乗せただけの(いわゆるアップコンバートの)番組が多い(民放の地上デジタルテレビジョン放送でも同様)
マルチチャンネル放送は、スポンサー間の調整などの問題により、無料放送局ではほとんど行われていない
双方向番組での通信を行う場合、電話線(公衆回線)を機器に接続する必要があり、IP電話のみを利用している家庭では双方向通信を利用できない。
NHKのみ、イーサネットケーブル接続により、インターネット経由での双方向通信に対応している。民放では一部の局が実験として行っていたが、2006年3月現在では対応していない。
データ放送は、NHK以外では内容が貧弱である。番組連動情報も、データを準備する必要があるため、NHKのごく一部の番組(野球中継の一部など)に限られている。JavaScript?を発祥とする、ECMAScriptによる動的なコンテンツが表現できるが、Java等に比べるとその表現力は極めて貧弱であり、また実行速度が遅い。さらにチューナー各機種ごとに互換性がない部分があるため、コンテンツ制作にはノウハウが必要でありコストがかかる。仕様を規定している規格書ARIB STD-B24は1分冊が百科事典並の分厚さがある4分冊構成であり、その余りあるボリュームから人材育成もままならないのが現状である。
その他に、4:3サイズのデジタルハイビジョン放送を4:3サイズのテレビで視聴する際、余白部分が重畳になることに因るいわゆる額縁問題がある。
現行のテレビで多数を占めている4:3サイズでこの現象が起こりやすい為、一部で視聴者からも不満の声が上がっている。本来BSデジタルの電波には画面サイズの識別信号が重畳されており、テレビ局側が適切な信号を送ればこの問題は発生しないのだが、テレビ局側がその処置を怠っているために発生しているのが現状である。サイズ切り替えはNHK(BS1、BS2)、BS朝日、WOWOW、スターチャンネルでは積極的に行われていて、BS日テレ、BS-iも僅かながら行われている。
額縁状態でなくても、ハイビジョンを4:3のテレビで見る場合にはどうしてもレターボックスやパンスキャンと為ってしまう。レターボックスの場合は画面が小さく感じられ、パンスキャンの場合はワイド部分が欠けてしまう。
なお、テレビやチューナーで表示する放送番組の映像信号情報は、あくまでEPG情報からの取得情報である場合が殆んどで、現状ではEPGへの信号情報のアスペクト比数値の記載に関して局によっては実際の信号内容ではなく「どう見えるか」を基準に行なっている場合もあり、記載基準がまちまちで、チューナーやテレビでの情報表示は誤解を生じ易い情況にある。
著作権・肖像権の問題
特に地上波キー局系5局は、BSデジタル放送を利用して系列局の無い地域(NNNの佐賀県と沖縄県・JNNの秋田県と福井県と徳島県と佐賀県・FNNの青森県と山梨県と山口県と徳島県・ANNの7県・TXNの34府県)もカバーすることが期待されていたが、これらの壁で、地上波で放送されている番組がBSデジタル放送を利用して自由に放送できないのが現状である(当初は地上波の同時・時差放送とごく一部の独自制作番組の編成を主体に行う計画だった)。しかし、視聴者の伸び悩みにマスメディア集中排除原則の規制緩和の方針を打ち出しており、BSデジタル放送を兼営することが出来るようになり、問題が解決される可能性が高い。この為、BSデジタルで放送される地上波の番組も増加傾向である。
NHKは地上波・衛星波共に同一法人であるため問題視されることが無く(但し、海外向けの国際放送〈NHKワールドTV、NHKワールド・プレミアム〉では一部のスポーツニュースの映像素材やオリンピック期間中などでは放送権の都合による制限がある)、地上波・衛星波が異なる法人である民放にこの問題が浮上している。またこのような問題により、地上波より先に放送される先行放送の番組が民放では少ない。
各放送局ごとの放送形態の違い
NHKは地上波で放送されている番組をBS2・BShiを中心に放送することが多く、同時放送(NHKニュース(一部)やNHKのど自慢、NHK紅白歌合戦など)やBSでの先行放送(NHK朝の連続テレビ小説、NHK大河ドラマなど)も少なくない。
これに対して民放では地上波より先に放送される先行放送の番組ではテレビ東京・BSジャパンの「水曜ミステリー9(BSミステリー)」、関西テレビ放送制作でBSフジで全国放送されている「ほんじゃに!」など少数で、この問題が原因で遅れ放送どころか地上波制作番組をBSで放送できない場合(主にアイドル出演番組や音楽番組、ドラマ)が多い。
また、民放のニュース番組の同時放送もBSジャパンはほぼすべてで放送されるものの、他局では「Oha!4 NEWS LIVE」、「NNNニュースダッシュ」(日本テレビ、BS日テレ、日テレNEWS24 月~金、この2番組もニュースによっては権利上の問題から静止画などに差し替えられることがある)に限られ、報道特別番組を行わない限り放送されていない。
BSジャパンは他の事業者とは異なりテレビ東京地上波番組は編成の半分以上を放送しているが、ニュース番組、スポーツ中継(野球、ゴルフ、競馬、マラソン、ボクシングなど)、「にっぽんの歌〈夏祭り・年忘れ〉」、大晦日の「東急ジルベスターコンサート」が同時放送される以外は数日〈早いものでは翌日〉から1年以上遅れの放送となっているのが現状である。
このため、各放送局の収益は芳しくない所が多く、既に撤退した放送局もある。このため、民放キー局各社は、赤字体質が続くBSデジタル放送の兼営ができるよう、総務省に対してマスメディア集中排除原則の撤廃ないし弾力的運用を希望していて、総務省側でも民放地上波キー局がBSデジタル放送の兼営ができるよう法改正を検討している(BSデジタルの「マス排」撤廃をどう考えるか)。ただしこれは、同時に地方民放局の存在意義にも関わる問題にも直結することから、これらの放送局との兼ね合いを取った上での方針変更が必要とされる。
■トランスポンダー
デジタルBS放送の再送信機のことで、衛星に搭載されている。地上のアップリンク局(放送局)からの電波を受け、これを日本列島に向けて送り返すものだ。従来のアナログBSのトランスポンダーと共用はできない。
■AAC方式
MPEG2規格で定められた音声の圧縮規格。今回のデジタルBS放送で初めて採用された。非常に効率の高い圧縮方式で、デジタルCSのBC(バックワードコンパチ)方式と比較して2倍以上の圧縮率で処理される。
■BSAT-2
アメリカのオービタルサイエンス社が製造した衛星で、現在使用しているBS4の後継機となる衛星である。ただし運用できるチャンネル幅はBS4と同じ4チャンネル分で、この帯域で7チャンネルのHD放送を行なう。
■データ放送
大きく分けると番組と連動した内容のデータの放送と、番組から独立したデータの放送の2種類がある。扱えるデータ帯域が広いので天気予報、クイズなど現在の地上波系データ放送よりもより多彩な内容が期待される。
■D端子
アナログの色差信号を伝送する専用端子のこと。D1~D5まで5種類が存在し、D5に近いほど伝送される信号が高帯域となる。最近のディスプレイはRCAピンの色差端子の代りにこのD端子を搭載するケースが増えてきている。
■BSラジオ放送
デジタルBS放送はテレビジョン放送だけでなくデータやラジオ放送も伝送できる能力を持っている。これを利用した放送。ただ現段階では移動体受信は不可能。AACの高圧縮率を利用した高音質放送が期待される。
■CAS機能
「コンディショナル・アクセス・システム」の略で限定受信機能の事。受信者を特定し、コンテンツを伝送したりスクランブルを解除させたりする。ICカードに書き込まれたデータのやりとりで実際の機能が設定される。
■PPV(ペイ・パー・ビュー)
1番組あたりについて課金する有料放送方式。すでにスカイパーフェク!TVでは運用中。これらの受信システムを司っているのはCASのシステムで、データのやりとりによって視聴した番組内容が特定される。
■EPG
エレクトリック・プログラム・ガイド。電子番組表の事。放送局側ではなく統一した番組表会社から各受信機に配信される仕組み。また機種によっては視聴者の好みに応じて見るべき番組を推選表示するものもある。
■スクランブル
有料放送の場合料金支払い契約をした人のみ視聴が可能だが、契約をしていない場合画面が乱れ視聴が不可能となる。この画面が乱れた状態のこと。WOWOW、スター・チャンネル以外は当分スクランブルはかからない模様。
■110度CS
これまでCS衛星はそれぞれ東経128度、124度にあったが、今年8月打ち上げ予定の新規CS衛星はBSと同じ110度に同一化される。このため将来はCS/BSのアンテナおよびチューナーが一体化する予定。
■サイドパネル
ワイドスクリーン上に4対3画面を映す場合、正確にアスペクト比を守るため左右に黒帯が必要。この黒帯をサイドパネルという。パネルを付加する方法などはチューナー側で適宜設定できるようサポートされる模様だ。
■アップコンバート
デジタルBS放送規格内のSD信号(480i、480p)を、HD信号(1080i、720p)に上位変換すること。例えばHDのニュース番組の資料映像などでSD映像を使用する場合、放送局側でアップコンバートして放送する。
■ダウンコンバート
デジタルBSの受信機は必ずしも全てがHD受信できるわけではない。よって例えばデジタルBSチューナーと従来のテレビでHD放送を受信する場合、1080i信号を480i信号に信号を下方変換する。この機能のことだ。
■コンテンツ
メディアに収録された、また伝送される/提供される全ての内容を総称としてコンテンツと呼ぶ。デジタルBS放送では、データ放送からSD/HD放送、BSデジタルラジオ放送までを含めてこう総称することになる。
■異時再送信
要は再放送のこと。他にも例えばBSフジなどのように、地上波/BSデジタル/CSデジタルと多くの放送波を持つ放送局が同じコンテンツを異なる時間とメディアで放映する場合があり、これもこう呼ぶことになる。
■サイマル放送
アナログの現行BS1/のコンテンツを、デジタルでも放映すること。またはその逆。現在アナログBSの受信世帯は相当な数にのぼっており、これらの視聴者保護の意味も含めて行なわれる予定。
■音声ミックスダウン
マルチチャンネルの音声を、2チャンネルなどで聴いても違和感ないよう混ぜ合せること。BSデジタル放送では5.1から2チャンネルへのミックスダウンの場合のみミックス比率係数の送出が義務づけられている。
■STB(セットトップボックス)
デジタルBSチューナーの別称。単なるチューナーではなく発展性を持ったチューナーという意味合いが強く、例えばアメリカではDVDプレーヤーやハードディスクによる録画機能を内蔵するもの等が実際に発売されている。
■ICカード
CASで用いるデジタルBSに関するデータ集約デバイス。視聴履歴、各種サービス利用履歴等を記録し、これを放送局側と電話線でやりとりする。メディアはフラッシュメモリーでデジタルBS製品購入時に付属する。
■まだら編成
デジタル放送はHD放送(1080iのハイビジョン)が主体だが、HDの1チャンネル帯域でSD放送が3チャンネル確保できる。これを利用し、時間帯によってHDとSDの放送を交互に組み合わせたまだら状の放送編成のこと。
■ベースバンド信号
BSデジタルのコンテンツはMPEG2に圧縮し放送されるが、この圧縮を掛けられる前の信号をベースバンドという。ちなみにBSデジタルの場合、ベースバンド信号をMPEG2により約50分の1にまで圧縮する。
■BSデジタル・EIAJマーク
EIAJ(日本電子機械工業会)が制定する、デジタルBS放送機材に関する一定基準をクリアした製品に付与されるマークのこと。例として、コンバーターの位相雑音の基準値は-52dBc/Hz以下に定められている。
■ストレージ機能
デジタルBSチューナーはコンテンツの貯蔵機能の内蔵が期待されており、この貯蔵機能をストレージ機能という。国内では、例えばハードディスクなどの番組貯蔵機能を持つチューナーは現段階でまだ出現していない。