HD DVD

HD DVD(High-Definition Digital Versatile Disc)は東芝とNECが共同で開発している次世代DVD(光ディスク)の規格。さらにピックアップレンズで世界シェアトップの三洋電機も開発に参加した。
概要
現行のDVD規格をベースに記憶容量を向上し、本格的なハイビジョン放送時代にも対応できるディスクメディアの規格である。読み取りに使うレーザーが青紫色(405nm)なのは対抗規格のBlu-ray Disc(以下BD)と同様だが、記録密度を上げることによって片面単層15GB/片面二層30GBの容量を確保したことと、圧縮技術の工夫によって、映像をハイビジョン画質で2時間以上記録することができる。 現在広く使われているDVDレコーダーの使用頻度はハードディスクの方がDVDよりも上であり、なおかつDVDレコーダー価格の下落ペースを考慮すると、保存目的で使うディスクメディアには低コスト性こそ求められているとHD DVD側は主張している。

低コスト性や簡便性を生かすために、HD DVDの用途としては、PCドライブ・家庭用ビデオレコーダー・HDソフトなどへの多岐の用途が検討されている。

パッケージ等に用いられるコーポレートカラーは赤。BD等と一目で見分けがつくように選んだと言われている。

2006年3月31日、日本国内でHD DVD再生専用機「HD-XA1」が東芝より発売された(CPRM対応DVD-RAM・DVD-RWの再生には非対応)。

同年5月には東芝のQosmioG30/697HSを皮切りに、HD DVD-ROMドライブ搭載PCが数社から発売された。HD DVD-ROMドライブはDVDスーパーマルチドライブも兼ねている。再生専用規格に対応したドライブの発売はBDよりも1ヶ月先行したものの、記録型ドライブの投入はBDの方が早かった。このためHD DVD陣営のNECも2006年秋発売の機種でBDドライブを採用する結果を招いている。

同年7月14日には東芝が録画再生機の「RD-A1」を発売する予定だったが、生産が遅れているとして7月28日発売に延期となった。HD DVDの記録は-Rのみとなる。なお、フロントパネルに「VARDIA」のロゴが入っているが、同機はダブルデジタルチューナー搭載機ではない。

HD DVDメディアの種類 bookmark

HD DVDの記録メディアには、DVDと同様に読み取り専用型と記録型の規格が存在する。

HD DVD-ROM: 読み取り専用のHD DVD規格。12cm片面1層15GB/片面2層30GB 8cm片面1層4.7GB/片面2層9.4GB
HD DVD-R: 1回だけ書き込み可能な記録型HD DVD規格。片面1層15GB/片面2層30GB
HD DVD-RW:繰り返して書き込みおよび消去が可能なAV用途向け記録型HD DVD規格。片面1層15GB/片面2層30GB
HD DVD-RAM: 繰り返して書き込みおよび消去が可能なPC用途向け記録型HD DVD規格。ランドグルーブ記録を採用。片面1層20GB/片面2層40GB

HD DVD-Video bookmark

HD DVD-Video規格では、下記のコーデックが採用されている。

ビデオコーデック
MPEG-2ビデオ
VC-1アドバンスドプロファイル
H.264/MPEG-4 AVCハイプロファイル
オーディオコーデック
2チャンネルステレオPCM
MPEGオーディオ
ドルビーデジタル(AC-3)
ドルビーデジタルプラス(DD+)
ドルビーデジタルロスレス (Dolby TrueHD)=MLP(Meridian Lossless Packing) 2チャンネルロスレス
DTSデジタルサラウンド
DTS-HDMaster Audio
再生機に対しては、DTS-HDがオプション扱いであることを除いて、全てのコーデックに対応することが必須となっている。

Blu-ray Discとの比較 bookmark

ハイビジョン対応を第一に考えるBDとこの点ではほぼ同じ設計思想であるが、HD DVDは以下のコンセプトを持っている。

映画を高精度かつ高音質で十分な時間,記録できる容量を持つ。
現在のDVDとの互換性が最大限得られる。
記録型ディスクにおいては再生専用装置との互換性が高い。
2006年3月の東芝新製品発表会では、東芝執行役上席常務の藤井美英がBDのアピールポイントに対して次のように反論し、

0.1mm層での多層化…0.6mm層のHD DVDの方が結局は多層化が容易。
ハードコート技術…HD DVDは記録面が深いので付加的なハードコートは必要ない
1080p対応…テレビ放送側が対応しておらず、メリットにならない
BD-JAVA…HD DVDにはiHDがある
BD+…AACSで十分だと思われる。BD+を支持するメーカーは一社しか現在明確ではない
最後にHD DVDがBDに劣っている点は一点もない、とまとめている。

DVDとHD DVDの片面2層ツインフォーマットディスクは、HD DVDへの橋渡し的役割を果たしBDに対しての優位点と考えられるため、HD DVD陣営ではコンテンツホルダーに対して積極的にツインフォーマットディスクを採用するように呼びかけている。BDでは物理構造的にツインフォーマットディスクを製造することが難しい(BD側でもコンビネーションディスクの開発報告が既になされているが、正式な規格としては策定中)。すでにHD DVD側のツインフォーマットディスクは多数が発売されている。

なお、HD DVD規格は、DVDと同様にDVDフォーラムによって議論および承認が行われている。DVDフォーラムが次世代DVDとして認めている唯一の規格である。参考リンク

映像圧縮 bookmark

規格立ち上げ当時、HD DVDとBD双方は、DVDの時代から10年以上技術の蓄積があるMPEG-2だけを採用する予定であった。

その為、対抗規格のBDと比べて転送レートが等速で同じ36Mbpsであるだけに容量が少ないことが、HD DVDの欠点であるかのように言われている。2004年2月にH.264(MPEG-4 AVC)やVC-1(Windows Media Video 9)といった圧縮技術を利用することである程度克服が可能であるとHD DVD側は、主張している。

それに対して、既に高画質化などのさまざまな技術の蓄積があり、枯れてはいるが信頼性の高い技術となりつつあるMPEG-2に対して、H.264やVC-1といった新しい技術についてはまだあまり信頼を集めているとはいえず、また、HDTVクラスの画面解像度においては精細さが損なわれやすいという弱点もある。このため、映画関係者は、より大容量のBDに対する支持が強いとBD側は、主張している。

しかし、HD DVD側がマイクロソフト由来の技術であるVC-1やiHDを採用したことによりマイクロソフトとインテルがHD DVD支持にまわり、次期WindowsにおいてBDが非対応にされることを恐れたBD側は、7ヶ月遅れでVC-1とH.264を採用すると発表している。

結果的には、映像圧縮に関しては両者ともほぼ同様の技術を採用することとなった。

音声圧縮 bookmark

HD DVDがBDと比較して、音声圧縮について優位な点は、DTS-HD以外のロスレス音声圧縮への対応が必須となっていることである(BDでは、すべてのロスレス音声圧縮がオプション扱いである)。

HD DVD対応の高音質音声を収録した初の音楽タイトルである「キース・ジャレット/東京ソロ2002」が早いタイミングで出てきたのもロスレス音声圧縮が音楽業界にも支持されているからだと考えられる。

なお、「キース・ジャレット/東京ソロ2002」では、音声圧縮をリニアPCMとDTSでおこない、ロスレス音声圧縮をDolby TrueHDと DTS-HD Master Audioで収録されている。

物理層 bookmark

カートリッジが不要な点からPCドライブとして期待されている(BDにおいても、メディア表面の保護技術に強いTDKの技術を利用してカートリッジなし規格の開発が進み、両者の差は縮まった)。

また、記録層の深さが現在のDVDと同じであることから、ピックアップ用のレンズ共用が可能で、設計製作上の敷居が低いとされる。この親和性を利用して、過渡期には現在のDVDにHD DVD規格の圧縮映像を入れたディスクも予定されていて、DVDとHD DVDのツインフォーマットディスクも発売されている。

参入企業
家庭用AV分野やノートPC分野に強い東芝、DVDドライブシェア世界一・PCやMPEGといったデバイスに強いNEC、読み取りレンズシェア世界一・低価格レコーダーに期待ができる三洋の三社で次世代大容量光ディスクメディアの主役を握ろうとしている。

2005年現在、トムソンが参入を、ユニヴァーサル・ピクチャーズ、ニューライン・シネマが、またコンピュータ業界をリードしてきたマイクロソフトとインテル(通称、ウインテル連合)も支持を表明しWindows VistaとXbox 360(外付けユニット予定、因みにライバルであるプレイステーション3Blu-ray Discを採用を発表している)で標準対応すると表明すると、BDとの次世代大容量光ディスク規格をめぐる争いは激化の一途をたどった。その争いはかつてのベータマックスとVHSによるビデオテープ争い以上といわれてきた。

2005年10月、HD DVD陣営のパラマウント映画、ハリウッド最大手でHD DVD陣営の中核企業であるワーナー・ブラザーズグループがBD陣営にも参加することを表明。これでHD DVDのみを支持するハリウッド企業はユニヴァーサル・ピクチャーズのみとなり、ハリウッド映画ソフトの売上シェアの約8割がBDを支持することになった。2005年12月、BDのみへの支持を表明していたヒューレット・パッカード(HP)が両規格を支持することを発表した。

達成されなかった規格統一 bookmark

2005年4月21日の日本経済新聞朝刊は、東芝とソニーの間で、HD DVD・BDの両者の長所を生かした規格を共同開発することで合意した、と報道した。これにより、次世代大容量光ディスクは一つに統一された規格となり、ユーザーやコンテンツ製作者のメリットは大きなものになることが期待された。

しかしながらその後の報道によれば、この交渉は難航した末に中断された。以降は互いに譲歩することなく、交渉が再開されないまま、2005年8月末には両陣営共に『交渉は時間切れ』として自陣営規格の本格的な製品化へ動き出した。これによりベータマックス対VHS戦争の再現は不可避となり、2006年に規格戦争が本格化した。規格の主導権争いもさる事ながら、余りにも両者の設計思想に相違点が大きかった事が原因と見られる。

東芝は2005年内にHD DVDプレーヤーを発売する予定としていたが、2005年9月、米国の映画産業の意向により米国内での発売を2006年春に延期すると発表した。さらに12月、日本国内での発売も年明けに延期した。著作権保護規格AACSのライセンスの発行が遅れているためとしている。

今のところ、ドライブ開発メーカーはかつてのベータマックス対VHS戦争のように勝ち馬に乗る形でどちらかの規格に流れていく可能性が強いが、将来的には両陣営にも属さない第三者的な立場のメーカーになるか、かつての記録型DVDメディア規格争いの時のように、規格争いの趨勢が決まった後で両規格対応のドライブを開発・発売する可能性も考えられる。

だが、2006年になると両規格対応を決めたメーカーも増えており、趨勢が決まる前から両規格対応のドライブを開発・発売する可能性も考えられる。韓国のLG電子は2006年3月14日、両規格を再生できる次世代大容量光ディスクプレーヤーの発売計画を明らかにしていた。

しかしながらLG電子は両規格対応機器をキャンセルし、結局BDプレイヤーのみの発売へと軌道修正した(参照:CEPro)。またHD DVD陣営のNECがBD搭載PCを発表するなど、現状ではBD側への揺れ戻しが見られる